2011年1月17日月曜日

日常と極限


 年末から、山の遭難モノ本を立て続けに読んでいる。きっかけは羽根田治さんの本『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』(山と渓谷社)。2009年7月、北海道のトムラウシで、登山ツアーに参加した18人のうち、ガイド含む8人が亡くなった。この遭難事故の経緯が、参加者へのインタビューによって明らかにされていく。暴風雨に見舞われた参加者たちは、次々と低体温症にかかって動けなくなる。でも、低体温症などというものを認識していたのはほんのわずかな人だけ。突如、生死の修羅場に放り出されたのは、単に趣味が山登りという、元気なおじさん、おばさんたち。そこは、危険を当たり前とするアルピニストたちが繰り広げる特別な世界ではなく、あくまで日常ワールドの延長。だから、いきなり死にさらされる極限の状況が際立って怖い。