2009年11月16日月曜日

「思いがけないめぐり会い、またはメッカの巡礼」


 昨日、グルックのオペラ「思いがけないめぐり会い、またはメッカの巡礼」を観る。北とぴあ さくらホールにて。企画は「北とぴあ国際音楽祭」。2006年から毎年、モーツァルトより古い時代の作曲家のオペラを取り上げ、当時のオリジナル楽器を使って上演している。ハイドン、モンテヴェルディ、ハイドンと来て、4回目の今年はグルックの登場。グルックは1714年に生まれ、1787年に没した作曲家で、主にオーストリアとフランスで活躍した(wikipediaによれば)。
 この音楽祭が楽しいのは、上演されるオペラにいつも嬉しく驚ろかされること。例えば、「ハイドン」なり「グルック」なりの作曲家に定着させていたイメージを、楽しくくつがえしてくれる。今回のグルックには、たんたんんとした――まあ、美しいけれど、古い時代の単調なメロディばかり――のイメージがあった。でも実際に昨日のオペラを観ると、楽しくて表現豊かな曲もたくさん作った人なんだということがわかる。後世に残ったグルックの有名な曲は、あたり前だけれど、この作曲家のほんの一部の作品でしかない。実は、同じことを、昨年上演されたハイドンのオペラ「騎士オルランド」を観ても感じたのだっけ。
 それと今年、また嬉しい発見だったのは、モーツァルトというのは、突発的に現れた大天才ではなく、グルックやハイドンら大先輩たちを学んだり真似たりしたうえで才能を開花させたということ。グルックのオペラ「~めぐり会い」やハイドンの「騎士オルランド」は、その後のモーツァルト作品「後宮からの逃走」や「魔笛」を彷彿とさせる。それと「~めぐり会い」には、モーツァルトのレクイエムに登場するフレーズが出てくるのだって(気づかなかったけれど)。天才は1日にしてならず。先達たちが積み上げてきたものを学び真似して自分のものとして昇華させたモーツァルト。後の時代の私たちは(特に日本では)、西洋音楽史の脈絡なくいきなりモーツァルトを聴くから彼の天才性がより際立ってしまうけれど、いやいや、モーツァルトの前にも多くの素晴らしい作曲家たちがいた。
 いつの時代の、どんな分野にでも言える。優れたものを生み出すには、先達にひたすら学び、真似し、研鑽するしかない。

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